役割を自覚すれば、大勢に影響を与えられるはず。

役割を自覚すれば、大勢に影響を与えられるはず。

酒井産業株式会社執行役員/営業部長酒井慶太郎さん

木曽を拠点に、木や竹を使った家庭用品・玩具などを企画・製造・販売している酒井産業株式会社。昭和10年創業の同社は、総合産地専門問屋としてはオンリーワンの存在で、製品の原料でもある森林を育てる事業や、木を通じて教育を行う「木育」にも積極的に取り組んでいる。今回は、同社の執行役員兼営業部長を務める酒井慶太郎さんに、日本の森林づくりの現状や「木育」への取り組み、最近注目している木に関する情報について伺った。

酒井慶太郎さんのトレンドリング
酒井産業株式会社 執行役員/営業部長 酒井 慶太郎さん(41歳)
東京経済大学卒業後、宝飾卸会社にて営業を担当。その後、祖父の代から続く酒井産業株式会社に入社し、現職にいたる。同社は、木曽を拠点に木・竹・籐などの家庭用品、玩具、家具などを開発・製造している。

― このたび酒井さんをご紹介くださった、株式会社マイティブックの松井紀美子さんとの出会いについて教えてください。

酒井慶太郎さん林野庁主催の「森林(もり)の市」で初めて松井さんとお会いしました。そのとき、当社と日本生活協同組合連合会(以下、生協)は林野庁関係のブースに共同出展しており、その際に生協の方にご紹介いただきました。松井さんはイベントの様子を取材し、自社の『ママチャリン』で紹介してくださり、それ以来のお付き合いです。「絵本」などを通じて、木のおもちゃの良さや森林問題をわかりやすく伝えられるのでは、という共通の思いがあり、よくアイデアを交換しあっています。

― 御社では、さまざまな木製品を扱っておられるようですね。

当社は木曽に本社をおく産地問屋で、創業当時は漆器を製造していました。が、現社長の代になり、白木や竹、籐などを使った他の製品もつくるようになりました。直接のきっかけは、40年ほど前に生協さんとお取引させていただくようになったことです。最初は栃ノ木のお椀を中心に卸していたのですが、 「家庭で使える木製品を揃えてほしい」とご依頼いただき、調理道具や木製食器、おもちゃ、インテリア用品なども開発・製造するようになりました。現在では、全国に150以上の協力工場で量産できる体制が整っています。

― そのほか、取り組んでいる事業について教えてください。

国産材の活用を推進して、日本の森林を活性化させる林野庁の「木づかい運動(3.9 GEEN STYLE)」や、その活動の一環である「木育(=木材の良さや利用の意義を学ぶ教育活動)」にも積極的に参加しています。具体的には、産学官が集まる「木育」推進委員会へオブザーバーとして参加し、木育のイベントプログラムや教材の開発に取り組んでいます。埼玉大学付属幼稚園で「木育」のイベントが開催された際には、当社のスタッフが紙芝居を作り、「木が育ち、暮らしに届くまで」を子どもたちに語って聞かせたり、木板を壁面に貼る体験や、木の玉を敷き詰めた「木のお風呂」を用意して木を体感するコーナーも作りました。

割りばしなど、木の製品を使うのは環境に良くない、と思っている人も多いと思います。しかし、元気な森林をつくるためには、国産の間伐材を積極的に利用して山を活性化させる必要があるんです。木が植えられてから最初に間伐される「小径木」は、節が多くて利用しづらいため、その多くは山の中に放置されているのが現状です。当社は現在、その小径木を使った室内遊具を開発中です。全国で約5万カ所ある幼稚園や保育園に、各都道府県産の間伐材でつくられた遊具を設置することで、園児が喜び、山も喜び、林業家も喜ぶ。木育、環境の両面から見ても良い効果が期待できるので、ぜひ実現したいと考えています。

酒井慶太郎さんそのほか、文科省・農水省・総務省の連携プロジェクト「こども農山漁村プロジェクト」にも参加予定です。この活動は、小学5年生の子どもたちが1〜2週間、農山漁村で自然体験活動を通し第一次産業を学習するというプロジェクトです。しかし雨が降ると、屋内での木工体験プログラムなどが必要となります。当社はその際に使用する木工キットなどの提案を予定しています。当社の教材や遊具、工作キットは、「エコプロダクツ2009」にも出展予定です。

当社製品のほとんどに木や竹が使われています。その原料の生産現場である森林が荒れているということは、自社の事業にも大きく影響します。木材を扱う企業は多数ありますが、家庭用品に特化した産地問屋が当社以外にはあまりないということもあり、林野庁や木材情報総合センターなどからも情報発信の機会をつくっていただいています。大企業ではないので大きなことはできませんが、自分たちの役割を自覚して行動すれば、多くの方に影響を与えることができるのではないかと思いながら取り組んでいます。

― 日頃、人脈づくりや情報収集はどのようにされているのですか?

人脈づくりは特に意識していませんが、仕事での出会いをきっかけに広がっているように思います。松井さんとの出会いのように、生協さんを介して異業種の方と出会う機会があるので、そこからビジネスのヒントをもらうこともあります。

酒井慶太郎さん情報収集に関しては、本から得ることが多いですね。やはり森や木に関する本は読むように心がけています。たとえば、『漁師さんの森づくり』(畠山重篤著・講談社刊)はとてもいい本でした。著者は宮城県で牡蠣の養殖している漁師さんで、牡蠣が育たない理由をヨーロッパまで学びに行ったところ、山から流れる水にその原因があったということです。漁師さんの視点から山を見るという珍しい本で、「森は海の恋人」という言葉にとても感銘を受けました。当社のように木を扱う企業も、森だけでなく海のことも考え、「海は森の恋人」という関係をつくっていきたいですね。この本は、『山に木を植えました』(スギヤマカナヨ著・講談社刊)という絵本にもなっていて、こちらもおすすめです。生協の組合員の方たちに森についてお話させていただく際、この絵本をお見せすると、とても興味をもっていただけるんです。

― 本以外に、最近注目されていることはありますか?

先日NTTドコモから発表された、国産間伐材でできた携帯電話の試作機「TOUCH WOOD」に注目しています。パンフレットで見ただけですが、ものすごくかっこいい(笑)。若い人たちに木の良さを知ってもらうためにも、携帯電話というのは良いアイデアだと思います。市場に出まわるようになれば、木の良さを見直してもらう良いきっかけになるのではないでしょうか。これまで木の製品にはブランドが存在しませんでしたが、「3.9 GEEN STYLE」が少しずつ認知されてきて、企業が木を選ぶ際、価格ではなく環境への配慮から国産材を選ぶようになってきました。少しずつではありますが、木の良さは確実に伝わっていると思います。

― 次回、ご登場いただく予定の梶谷隆之さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

酒井慶太郎さん地球にやさしい「グリーンウェディング」を提案している、株式会社CS・グループの代表取締役・梶谷隆之さんとは、「インターナショナル プレミアム・インセンティブショー」というイベントでお会いしたのがきっかけです。当社は端材を使ったノベルティグッズを出展しており、CS・グループさんとはその会場で出会いました。お話の中で、木でできたウェルカムボードやミニギフトなどの開発を行いたいという梶谷社長の熱い想いに感銘し、協同での開発が始まりました。以来、親しくお付き合いさせていただいています。梶谷さんは、「ゆくゆくは森とお客様をつないでいきたい」というほど森への想いが強い方なので、会えば木について語り合い、情報交換をしあう仲です。