異業界の動向も、ビジネスの発想の参考に。

異業界の動向も、ビジネスの発想の参考に。

ウィルライフ株式会社代表取締役増田進弘さん

ecoffin[Will]“段ボールの棺”と聞くと、驚く人も多いのではないだろうか。しかも、その棺を使うと、モンゴルでの植林や日本の森の再生にも貢献できるという。今回は、燃焼時のCO2排出量が少ない段ボールや国産間伐材を使った、環境にやさしい棺を企画・開発しているウィルライフ株式会社の増田進弘さんに、段ボール棺を開発するに至った経緯、コラボレーションによって生まれた商品、さらには日頃の情報収集の仕方などについて伺った。

増田進弘さんのトレンドリング
ウィルライフ株式会社 代表取締役 増田進弘さん(56歳)
名古屋学院大学卒業後、家具問屋に就職。その後、家業の家具屋、葬儀ギフト会社などを経て上京。親会社であるトライウォール株式会社の代表から誘われ、ウィルライフ株式会社に入社。同社は、段ボールや間伐材でできた、環境にやさしい棺を企画・開発している。

― このたび増田さんをご紹介くださった、株式会社トランスブレインの藤野正成さんとの出会いについて教えてください。

増田進弘さん藤野さんとは1年半ほど前に出会って以来、イベントなどで顔を合わせれば立ち話をしていました。とくに親しくなったのは昨年の夏ごろからです。私が副会長を務めるNPOのイベントで初めてじっくりお話する機会があり、もう一度会う約束をしたんです。次に会ったときには、「一緒に何かやろう」とすっかり意気投合していました。藤野さんは、葬儀業界を変えたいという気概をもつ情熱家なので、いつも刺激をもらっています。

― 御社は、環境に配慮した棺を取り扱っているとのことですが、それはどのような製品なのですか。

当社では、エコフィン[ノア]と、エコフィン[ウィル]という2種類のエコ棺を扱っています。前者は、特殊強化3層段ボールでできた紙製、後者は国産ヒノキの間伐材と特殊強化2層段ボールでできたハイブリッド製です。

現在、日本の棺のほとんどが、熱帯の天然林から伐採した木材の合板で作られています。しかし、これは環境にいいとは言えません。なぜなら、熱帯雨林がCO2を吸収して酸素を供給することで、「地球の肺」の役割を果たしているからです。そこで、当社は今から3年ほど前に、「トライウォール・パック」という、軽くて強度のある3層段ボールの棺を開発しました。これがエコフィン[ノア]です。“段ボールの棺”と聞くと驚かれるかもしれませんが、内外装に布を貼ってあるので、見た目は従来の棺と変わりません。が、合板の棺に比べ、利用資源や燃焼エネルギーが大幅に軽減できるので、環境にやさしい。くわえて、1棺につきモンゴルに10本の植林をするという寄付も付いているので、葬儀で排出されるCO2の吸収削減という社会貢献ができるようになっています。

ecoffin[Will]一方、坂本龍一氏が代表を務める「more trees(モア・トゥリーズ)」とのコラボレーションによって生まれたのが、エコフィン[ウィル]です。これは、高知県の四万十川流域で育ったヒノキの間伐材と2層段ボールでできたハイブリッドの棺で、売り上げの一部がモア・トゥリーズに寄付されるほか、葬送で排出されるCO2をカーボンオフセット(相殺)される仕組みになっています。デザイン性の高さから言っても、これまでになかった棺だと思います。

― 段ボールや間伐材で棺を作ることは、どのように着想されたのですか?

トライウォール株式会社当社は、トライウォール株式会社という梱包材メーカーの子会社です。もともと段ボールの加工技術や、環境に関する知識・経験があったので、最初は段ボールの棺をアメリカから輸入したんです。ところが、葬儀業界は保守的なため、紙製の棺というものに強い抵抗感があったようで、なかなか受け入れられませんでした。しかも当時は、「環境にいい紙といえば再生紙」という考えが一般的だったので、当社のヴァージンパルプ製の棺は、環境にはやさしくないと言われてしまいました。そこで、木や段ボールなどの素材に関するデータを集め、勉強しなおした結果、自信をもって製造販売できる、現在の製品になりました。エコにフォーカスするようになったのも、それからです。

そうやって環境について学んでいくうちに、海外の森林資源だけでなく、日本の森林整備から出る間伐材も使えないかと考えるようになりました。私の実家が家具屋だったので、木に馴染みがあったことも影響しているのかもしれません。日本の国土の約1/4は、戦後に植林された人工林です。昔は、間伐材は建築の足場などに利用されていたのですが、森から下ろしてくるコストがかかることもあり、今では使われなくなってしまいました。輸入材のほうが安価なことも、要因のひとつです。そんなとき、以前から知り合いだった水谷伸吉さんが、モア・トゥリーズの事務局長になったと挨拶に来られたんです。間伐材の利用法について水谷さんと話をしているうちに、「使い道がないのなら、棺にして燃やしてしまえばよいのでは?」というアイデアが出てきて、間伐材の棺が誕生しました。

― そのようなアイデアを得るために、日頃どのように人脈づくりや情報収集をしているのですか?

以前は、セミナーや交流会などに積極的に参加していたこともありますが、最近はほとんど行きません。私にとっては、あまり効率のよい方法ではないと感じたからです。でも、ビジネスに関係のありそうな人には、できるだけ会うようにしています。

情報収集に関しては、インターネットやメールマガジンを活用しています。インターネットに関しては、“中毒”と言ってもいいほどで、気になったことはキーワードを検索して調べます。メールマガジンは、IT業界のものを愛読しています。進歩の速いIT業界で、どのようにビジネスが変化していくのかがとても興味深く、業界は違っても、発想の仕方が参考になります。また、『ビジネスブックマラソン』というメールマガジンも参考にしています。これは、ビジネス書を毎日1冊紹介してくれるというもので、その中から気になったものを月に4、5冊程度読んでいます。

そのほか、コミュニケーションツールにも興味があり、iPhoneなど、新しいものはすぐに入手するようにしています。最近、Twitterも始めました。また、デザインにも興味があるので、インテリア雑誌などもよく見ます。どんな製品でもデザインは重要ですよね。デザインには、人の心を動かす力がありますから。エコフィン[ウィル]のデザインにこだわったのも、そのためです。

― 今後、どのようなことに注力していきたいですか?

増田進弘さんまずは、エコフィンの認知度を上げることです。当社では、エコフィンの中にアンケート葉書を入れているのですが、これまでに900通ほどの貴重なご意見が寄せられました。ほとんどが、「環境保全に貢献したい」「主人の最後の社会貢献です」といった内容のもので、それらのご意見を読ませていただくと、エコフィンのマーケットは確実に存在していると感じます。

従来の棺に使われている合板を積み上げると、1年間で富士山の約7倍の高さになると言われています。それだけ大量の天然木が燃やされているわけです。環境への取り組みは100年単位の仕事なので、今行動しなければ後の世代に付加がかかります。そのためにも、自分なりの価値観をもつ能動的な方たちに、エコフィンの存在を知っていただき、葬儀によって社会貢献することがスタンダードになればと考えています。

― 次回、登場予定の水谷伸吉さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

先ほどもお話した、モア・トゥリーズの事務局長・水谷伸吉さんとは、5年ほど前に植林活動を通じて知り合いました。当時、水谷さんはインドネシアの植林団体に勤めていらっしゃったんです。若いのに落ち着いていて、芯もあり、クレバーな水谷さんと、またお仕事ができて、嬉しいかぎりです。