情報収集の方法は、「読む」「動く」「観る」。

情報収集の方法は、「読む」「動く」「観る」。

コピーライター/プランナー深津 章さん

ことばで人に伝えることを生業とするコピーライターは、日頃どのように情報収集をしているのだろうか。今回はフリーランスのコピーライター兼プランナーとして、大手IT企業をはじめ、多くの広告プランニング・制作を手がけるかたわら、個人でも「Re:DESIGNERS PROJECT」というフリーペーパーを発行している深津章さんに、3つの情報収集の仕方と、「自分をデザインする」ということについて伺った。

深津章さんのトレンドリング
コピーライター/プランナー 深津 章さん(31歳)
中央大学卒業後、コピーライターとしてデザイン会社に入社し、大手IT企業などの広告制作に従事。2007年、フリーランスとして独立。個人の活動として、「Re:DESIGNERS PROJECT」というフリーペーパーも発行している。

― このたび深津さんをご紹介くださった、一般社団法人more treesの水谷伸吉さんとの出会いについて教えてください。

Re:DESIGNERS PROJECT水谷さんとは、2年ほど前にある方の紹介で知り合い、「第1回みなと森と水会議」のディレクションをふたりで担当させてもらったのがきっかけです。出会ってすぐに意気投合し、「これから長い付き合いになりそうだね」と話したのを覚えています。以来、水谷さんが事務局長を務めるmore treesの写真展やPRツールの制作にも関わらせてもらうようになり、今年3月には、more treesの企画・制作を担う部門として「more trees design」という有限責任事業組合(LLP)を7名で立ち上げました。今後、水谷さんとはこれまで以上に親密なお付き合いになると思います。

― 現在、フリーランスで活動されているそうですが、主にどんな活動をされているのですか?

以前勤めていたデザイン会社ではIT系企業のクライアントが多かったこともあり、フリーランスになった現在も、IT系企業とお仕事をさせていただくことが多いですね。なかでも注力しているのは、マイクロソフト社の「企業市民活動」です。これはマイクロソフト社が社会貢献の一環として行っている活動で、自社のICT(情報通信技術)を地域活性化や障害者支援などに広く役立てようという取り組みです。企業が地域を支援するだけでは、持続していくのは困難です。そのため、同社は自治体とコラボレーションしながら、地元にICTリーダーを育成し、彼らにICTを広めてもらうという持続可能なモデルを作ってきました。僕は、その活動内容を社内向けにレポートするメールマガジンを執筆しています。この活動は社会貢献としての重要性はもちろんですが、地域の人がまわりの人に広めていくという意味で、新しい広告、新しいマスメディアのかたちとしても可能性を感じています。

IT系以外にも、環境関連や教育関連など、さまざまな業種の企業・団体とお仕事をさせていただいています。また、コピーライターという職業柄、経営者や営業担当者、消費者など、さまざまな方にインタビューする機会があります。近年は、それらの経験で身につけたノウハウや視点を地域に還元したいと思い、地方の中小企業にコンサルティングをしてコミュニケーションを活性化することにも取り組んでいます。面白いものを一緒に作り上げていく作業は僕自身のモチベーションにもなるので、お互いにモチベーションを提供しあいながら、効果的な情報発信に一役買えればと思っています。

ビジネス以外の個人活動としては、24歳のころから「Re:DESIGNERS PROJECT」というフリーペーパーを自費で発行しています。これは、毎号“自分をデザインできている人”をひとりずつ紹介していくというものです。ここ数年、忙しさにかまけて発行できていないのですが、今後もぜひ継続していきたいですね。

― 面白いコンセプトですね。“自分をデザインできている人”というのは、どういう人なのですか?

深津章さん「デザイン」と聞くと、グラフィックデザイナーとかファッションデザイナーとか、そういう職業をイメージされる方が多いと思います。でも僕は、デザインは限りなく自然の行為に近いのではないかと思っているんです。たとえば今日、この取材を受けるに際し、僕は自分の服装や髪型を考えてきました。これも一種の「自分をデザインする」という行為だと思います。主婦の方が美味しい料理を作って明るい家庭にしようと努力するのもデザインだし、男性が奥さんに花を買って帰るのも立派なデザインです。そういうことを意識せずに自然にできている人を取り上げ、そもそもデザインとは何なのか、ということを考えてみたかったんです。“デザインできている人”というのは、自分の役割を認識して、自分が何者たるかを知っている人だと思います。たとえば、僕が木村拓哉さんになりたいと思っても、そうなりたい大勢の人との競争になるだけだし、しかもどうやっても木村さん本人には勝てませんよね(笑)。でも、僕が僕になるぶんには、誰にも負けないんです。この当たり前のことに気づくのって意外と難しいと思いませんか? こういうことを素直に捉えられている人が、“自分をデザインできている人”だと思います。

― 日頃、人脈づくりで意識されていることはありますか?

深津章さん人脈を広げるために、自分から積極的に行動するということは特にありません。人として当たり前のことを丁寧にやっていれば、おのずと人が紹介したいと思う人間になれるはず。まずはそこがスタートだと感じています。こう考えるようになったのは、高校時代に父から言われた言葉が影響しています。当時、僕は多くの知識を得ることが重要だと思っていて、そのことを父に話したら、一蹴されました。「仮に、世界にあるすべての知識が大きなハンカチのようなものだとすると、その周りを全部歩こうとすれば一生かかっても終わらない。でも、ハンカチの一点をつまんでぐいっと引き上げれば、高い山ができる。ひとつのことを目指していけば、おのずと欲しい知識が得られ、必要な人にも出会える。そのほうが近道だし、結果的にある程度広い範囲の知識が身につくはずだ」と。至言だと思いましたね。今でも印象に残っています。自分のやるべきことを一生懸命やっていると、自分に足りないものが見えてきて、その足りない部分を補ってくれる人に会わなければと思います。それが人脈になっていくのかな、と考えています。

― では、情報収集はどのようにされていますか?

深津章さん情報収集の仕方は、大きくわけて「読む」「動く」「観る」の3つがあります。ひとつめの「読む」というのは、主に読書です。小説、漫画、論文など何でも雑多に読みますが、なかでも重視しているのは歴史です。情報を入手するときには、根幹の部分が揺るがない普遍的なものを摂取したいと思っているので、風化せずに残ってきた歴史がいちばん参考になります。一方で、最近はtwitterもよく利用しています。人間の喜怒哀楽をリアルタイムに収集できるのが画期的だと思います。ふたつめの「動く」は、歩くことです。1日に1時間は歩くようにしています。歩くことで街の景色や季節など、五感を使って情報を収集することができます。考えごとをするのにも適していますし、歩いているあいだは誰にも邪魔されずに自由になれるのでお勧めです。3つめの「観る」は、映画やオペラなど、人が創ったものを見ることです。

― 次回、登場予定の佐藤武司さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

株式会社ライトニングの代表取締役・佐藤武司さんは、先ほどお話しした「more trees design」というLLP立ち上げの発案者です。昨年、more treesの写真展のお仕事で初めてお会いしました。行動が速くて、やることにためらいがなく、昨年お会いした人のなかでいちばんインパクトのある方です。学ぶべきところがたくさんあるので、今後も親しくお付き合いさせていただきたいと強く思っています。