日本の良さを世界に紹介するのが、最近のテーマ。

日本の良さを世界に紹介するのが、最近のテーマ。

株式会社ライトニング代表取締役/プロデューサー佐藤 武司さん

ミュージックビデオの制作、写真展の開催、プロダクトデザイン、政治家のPRコンサルティング……。一見、まったく異質に思えるこれらは、すべてあるひとつの会社が手がけた仕事である。今回は、映像制作会社から企画・コンサルティング会社へと進化し、さらなる活躍を続ける株式会社ライトニングの代表取締役・佐藤武司さんに、自身のテーマと、そのテーマへの知識を深めるために実践されていることを伺った。

佐藤武司さんのトレンドリング
株式会社ライトニング 代表取締役/プロデューサー 佐藤武司さん(37歳)
明治大学在学中にアメリカへ留学。帰国後、学生を続けながらアートプロデュースの会社を設立。大学4年のとき、ビクターエンタテインメントデザインセンターに入社、多くのアーティストのCDジャケットを手がける。2004年、株式会社ライトニング設立、現在に至る。

― このたび佐藤さんをごご紹介くださった、コピーライター/プランナーの深津章さんとの出会いについて教えてください。

深津さんとは、more treesと当社の企画・制作で昨年開催したチャリティー写真展「TOUCH WOOD」のお仕事で知り合いました。深津さんに同展のコピーライティングをお願いしたのがきっかけです。「優秀なコピーライターとは、上手に嘘をつける人」というのが僕の持論なのですが、深津さんの場合は嘘で人を気持ちよくさせるのではなく、真実を正面から突きつけるようなコピーを書かれるんです。そういう意味で、彼は広告業界にはあまりいないタイプの人だと思います。

― もともと、御社は映像制作会社だと伺ったのですが、現在は映像以外のものも多く手がけていらっしゃるようですね。

GRiD僕は以前、ビクターエンタテインメントデザインセンターというところで、CDジャケットの制作に携わっていました。音楽業界が一番良かった時代です。が、そのうちCDから音楽配信への転換期が来て、これからは写真だけでなく映像も必要になると感じました。そこで、アートディレクターが映像を作りやすい環境を整えようと考え、社内に映像編集室を作って社外のクリエイターにも開放したんです。平井堅さんや元ちとせさんなど、ビクターの所属ではないアーティストのミュージックビデオも手がけたりしていました。ところが、しばらくしてその編集室が閉鎖されることになってしまったので、独立して映像制作会社を設立しました。それが株式会社ライトニングの始まりです。

会社を設立して何年かは映像の制作だけを行っていたのですが、メディアが多様化するにつれ、ご依頼いただくお仕事もWeb、プロダクト、サービスというように多様化してきました。たとえば、携帯電話のインターフェイスやiPhone、iPadのコンテンツ制作、グッドデザイン賞を受賞したUSBメモリ「GRiD TAG」などがその一例です。最近ではmore treesと連携して環境に関するさまざまなプロジェクトを企画・運営したり、ある政治家のPRに関するコンサルティングを行ったりと、映像以外の分野でも「人に伝えること」をお手伝いする機会が増え、「映像制作会社」から「企画・コンサルティング会社」へと変化してきました。

僕は、自分に与えられた仕事は「人に伝えること」だと思っているんです。最初は、CDジャケットやミュージックビデオで音楽の良さを伝えてきましたが、それがCMやWeb、サービスなどに広がり、最近は、ひとつの作品を作りあげるよりも、多くの人が使いやすくて快適だと思えるもの、社会的に価値あるものを伝えていきたいと考えるようになってきました。人とモノとの関係性を作るほうに興味が移ってきたのだと自分では理解しています。

― なぜ、「人に伝えること」をご自身の仕事だと思われたのですか?

佐藤武司さん昔からアートに興味があったのですが、自分はクリエイターではないとわかっていたので、クリエイターと世の中をうまくつなげていくのが自分のテーマだと思ったんです。大学生のときにアメリカへ留学し、そこで知り合ったアーティストたちを日本に紹介しようと考えたのがきっかけです。帰国後、アートプロデュースの会社を立ち上げ、伊勢丹で展覧会を開いたりしました。その後、CDジャケットの制作に携るようになってからも、映像ディレクターを世界に紹介するWebサイトを立ち上げたり、「音楽映像製作者協会」を設立したりしました。クリエイターの作品を世の中に伝え、彼らの権利を守るのが自分の役割だと感じていたんです。

最近は、国外に輸出できるものを作って日本の産業を盛り上げたいというのが新しいテーマになってきています。そのひとつが、more treesとの出会いがきっかけで開発が実現した、木の携帯電話「TOUCH WOOD」です。これまで、さまざまな携帯電話が製造されては半年ごとにモデルチェンジを繰り返してきました。しかし、「それでいいのだろうか?」と常々疑問に感じていました。この「TOUCH WOOD」 は、愛着を持って長く使えるだけでなく、使うことで社会のためにもなります。最終的に輸出できるようになれば、ヒノキという「日本の資源」と、木材の圧縮という「日本の技術」を活かして日本の産業を盛り上げることもできます。日本が持つ資産と現代の技術をどのように組み合わせていくのかを考えるのが、自分たちの世代に課せられた義務だと思っています。

― 日頃、人脈づくりでどのようなことを意識されていますか?

一番意識しているのは、「嘘をつかずに仕事をすること」です。扱うものが何であれ、“気持ちのある人”と仕事がしたいと思っているので、正直に自分の気持ちを伝えるようにしています。場合によっては仕事をおりることになったり、喧嘩になってしまうこともありますが、自分の意見を伝えたときに反応を返してくれる人と仕事をしたいので、嘘をつかないことは大切です。おかげさまで、仲良くしていただいている方は “気持ちのある人”ばかりです。そういう意味では出会いに恵まれていると思います。

― では、情報収集はどのようにされていますか?

佐藤武司さん僕は食べることが好きなので、美味しいものが好きな人からの情報を信用しています。極端に言えば、不味いものでもいいと思っている人は信用できないし、いいものが作れるとは思えないんです。「食」は、人種や立場を超えて喜びを共有しやすいものなので、コミュニケーションツールとしても役立っています。

また、日本の良いところを世界に紹介したいというのが最近のテーマなので、日本のことをもっとよく知るために小笠原流礼法と華道を習っています。外国の人たちは日本に憧れの気持ちを持っているのに、そのことに気づいていない日本人が多いのは残念なことです。日本には世界に誇れるものがたくさんあるので、僕自身ももっと知りたいと思い勉強中です。そのほか、アート・マネージメントを学ぶために大学院にも通っています。昨年、more treesの写真展を開催したときに「どうすれば写真がアートになるのか」を知りたくなり、通うことに決めました。写真家の作品はアートと呼ばれるのに、なぜ広告カメラマンの作品はアートとして認められていないのか。日本には優れた広告カメラマンが大勢いるので、彼らの作品をアートとして世界に紹介したいと考えているんです。このように、自分がテーマにしていることで知りたいことがあれば、すぐに行動に移し、情報を集めたり学んだりするようにしています。

― 次回、登場予定の工藤美樹さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

こびとのくつ株式会社の代表取締役・工藤美樹さんとは、1年半ほど前にある雑誌社の方の紹介で知り合いました。同社はフォトレタッチなどを行う画像製作会社です。誰もが便利なツールを持ち、誰もが簡単にモノづくりをできる時代だからこそ、「プロの仕事とは何か」という価値を提案をしている企業だと思います。