「新宿のおばちゃん」が出会いに恵まれる理由。

「新宿のおばちゃん」が出会いに恵まれる理由。

キッチンさらぼんオーナー牧野美保さん

毎日200食の手作り弁当を製造・販売。路上販売と店舗運営を切り盛りする。200食という販売個数は、自分の目が行き届く最大値なのだとか。毎日愛情をこめて作ったお弁当を売り切り、なおかつそれを継続することが目標とおっしゃる牧野さんに、仕事や顧客に対する想いを伺った。

牧野美保さんのトレンドリング
キッチンさらぼん オーナー 牧野美保さん
20年勤めた公的機関を退職後、車で仕出し弁当の販売をスタート。開始から着々と販売数を伸ばし、販売所である新宿中央公園で人気を呼ぶ。現在は、千歳烏山に店舗もオープンし、従業員8名を抱える。家庭では夫と3人の子をもつ母でもある。

― このたび牧野さんをご紹介くださった、株式会社カラーズの高田裕子さんとの出会いについて教えてください。

共通の友人の紹介で、高田さんが私を取材しに来て下さったんです。初対面とは思えないほど、まるで昔からの友達のように接してくださったので、私も真の姿のまま接することができたんですね。その後も何度か販売所に顔を出してくれて、現在もお付き合いを続けさせてもらっています。高田さんは肯定的に接してくれるから前向きでいられるんです。NHKのラジオ番組に「働く女性」というテーマで紹介してくれたこともありました。もう5年越しのお付き合いです。

― いろいろな取材を受けていらっしゃいますね。

牧野美保さんこの仕事を始めてから、いろいろな人に「面白い人だね」とお声をかけていただくようになりました。そのうちのひとつが高田さんとの出会いでした。
子どもの学校で知り合ったPTA関係の人や、友人からの働きかけなど、思いもよらないところからご紹介をいただきます。利害関係を考えて自分から人脈を広げようという考えはまったくありません。自分から働きかけなくても、向こうから来てくださるんです。

― 多くの出会いに恵まれていらっしゃるのは、どうしてだと思われますか。

シャッターを開けていると、定休日でも声をかけて下さるお客さんが多いんです。それは「ありがとう」「ごめんなさい」を言うなど、日々の積み重ねが影響しているのかもしれません。自分が相手をどう見るかではなく、心を開き誠意をもって相手に接することで、相手にどう映るかという第一印象に気を配っています。若いころは自分を格好良く見せようという気持ちがありましたが、今ではなくなりました。与える印象が大切なことに変わりはありませんが、格好の良し悪しではなく、誠実な姿勢を伝えることの方が大切だと思いますね。

この仕事を始めた直後のことですが、私は新宿中央公園の歩道の外側、つまり車道で仕事をしていました。そのとき植え込みを隔てた歩道側から、サラリーマンが私を白い目で見ながら去って行ったんです。でも私だって最近までスーツを着て仕事をしていた。昨日まで同じ側にいたんです。今は冷たい視線を送る人のほうが気の毒だと思いますが、この仕事を始める前は、私にも階層意識があったことに気付きました。それ以来、世間には色々な人がいるけれど、みんなに同じ目で接していこうと決めんたんです。わたしはただの“新宿のおばちゃん”なんですよ(笑)。

― 仕事を続けるうえでの原動力はなんですか?

牧野美保さん私は、お客さんの「ことば」に救われています。「おばちゃんのお弁当は美味しいね」と言ってもらえると本当にうれしい。転勤や退職で、もうお弁当を買いに来られないからと言って、最後の日にメモをもらうこともあります。「昼休みにおばちゃんに会うのが楽しみだった」と書いてあったときは、グッときました。

お客さんと接していると、いろいろなことを感じますよ。たとえば、いつもお釣りを返す時に、手と手が触れるのがイヤなのかなと思える態度の無愛想なお客さんが、実はたくさんのお客さんをご紹介してくださるキーマンとなって、気づけばそこで人の輪ができています。
逆に、いつも気さくに話しかけてくれる愛想のよい人が、突然パタっと来なくなって、結婚退職したことを他の人から聞かされることもあります。ひとこと言ってくれればよいのにと寂しくなることもあるんです。そういうとき、人ってホントに判らないなと感じますね。判らないから、常に誠意をもって均一に接していないといけないと思っています。どんな人も “神様”だと思って接するようにスタッフにも言います。わたしたちが試されているんだと思うんです。

― それは、毎日200人の方と接しているから感じることですよね。

牧野美保さんそうですね。自分で仕事をし始めてから思うようになりました。うちは業者さんからも、とても大事にしてもらっているんですね。たまに業者さんとお客さんだと、手のひらを返したように態度が変わる店があるでしょう? 「あれは絶対なしよ」とスタッフみんなに言っています。いつ業者さんがお客さんに変わるかわからないし、業者さん同士の口コミもある。やってもらっていることに感謝しようね、と言っています。宅急便の配達員の方や肉屋さん、八百屋さんなど、誰にでも「ありがとう」「ごめんなさい」を言うように口酸っぱく言っているので、これはかなり浸透しています。そしたらね、3.11大震災の時に食べものの調達に全く困らなかったんです! 市場に行っても食材がない。でも私たちはほしい。そんなとき、仕入れたいお店の方が代わりのものを見つけてくれました。あのとき、お客さんに「たべものなくて困るでしょ。どうしてるの?」と、よく聞かれましたけど何にも困っていない状態だったんです。

― お客さまからのクレームにはどのように対処していますか。

もちろん商売ですから、クレームをいただくこともあります。以前おかずを1品入れ忘れてお届けしてしまったことがありました。そのとき、お客さんは「いいよ」と言ってくださったのですが、配達したスタッフはその場で代金をお返しして店に帰ってきたんです。「みほりん(牧野さんのこと)ならきっとこうすると思って」と言って。お客さんに対する私の想いや考え方は、スタッフみんなに伝わっていると思いますね。

― 強い浸透力ですね。何か秘訣はありますか。

牧野美保さん会話はよくしています。朝は何かと忙しいですが、仕込みをしながら会話をするようにしています。
なにしろ週4日は私だけ新宿中央公園に路上販売に出てしまうので、朝の時間帯は重要です。スタッフの定着が安定しているのはコミュニケーションの量によるものだと思いますね。
スタッフからは親しみを込めて「みほりん」と呼ばれています。

― 次回、登場予定の丸山浩器さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

丸山浩器先生は、「個別指導の学習塾セルモ 世田谷烏山教室」のFCオーナー兼経営者です。娘の高校受験でお世話になり、今では週に1回、必ずお店に来てくれるお客さんでもあります。十数名いる教え子全員を志望校に合格させた腕利きの先生で、勉強だけではなくメンタルケアまでしてくれる丸山先生を見るたびに、やはりリーダーには目配りや気配りが重要なのだと再確認させられます。