異なるジャンルへの挑戦で人間力を高める。

異なるジャンルへの挑戦で人間力を高める。

株式会社エクスパンダ代表取締役浦木健太さん

「スキー選手のセカンドキャリア」と聞くと、どんな道を想像するだろうか。今回お話を伺うのはプロスキーヤーから、ウェディングドレスのサロン経営という、一見まったく異なるジャンルの道を選択した株式会社エクスパンダ 代表取締役の浦木健太さん。セカンドキャリアを模索しながら起業に至るまでの道のり、ワンオーナードレスを扱うようになった理由、日頃の情報収集や人脈づくりなどについて伺った。

浦木健太さんのトレンドリング
株式会社エクスパンダ 代表取締役 浦木 健太さん(37歳)
4歳からスキーを始める。28歳まで約10年間、アルペンスキーの全日本ナショナルチームに所属。引退後は中国アルペンスキーナショナルチームのヘッドコーチやアルペンスキーワールドカップの解説業などを行う。大学を卒業した2008年にインターネットで「ミループウェディングドレス」をオープン。スキーの仕事を続けながら、現在は横浜でドレスサロンを経営する。

― このたび浦木さんをご紹介くださった、Wedding LABの遠藤佳奈子さんとの出会いについて教えてください。

ウェディングドレスの事業を立ち上げたとき、スキー仲間がブライダル業界に知り合いがいるということで遠藤さんを紹介してくれたんです。以来、お客様をご紹介いただくことも多く、遠藤さんは友人でありビジネスパートナーです。また、僕はブライダル業界に関してはまったくの素人だったので、業界についていろいろと教えてもらえる頼もしい先生でもあります。

― 浦木さんは、スキー選手でしたよね。

はい。実家が新潟のスキー場で宿を経営しているということもあり、4歳からスキーを始めて、高校はアメリカにスキー留学しました。その後28歳までの約10年間、アルペンスキーの全日本ナショナルチームに所属し、主にヨーロッパを拠点に活動していました。引退後は中国アルペンスキーナショナルチームのヘッドコーチやワールドカップの解説など、スキーに関する仕事をしてきました。まさにスキー漬けの毎日です。現在も、シーズン中はドレスサロン経営とスキー関連の仕事を両立しています。

― そんな浦木さんが、なぜウェディングドレスの事業を始められたのですか?

浦木健太さん引退後はコーチや解説の仕事をしながら、大学の夜学に通っていました。卒業したら自分で事業を立ち上げたいと考えていて、最初はスキーやスポーツに関する事業を中心にイメージを膨らませていました。それなりにアイデアは持っていましたが、考えが少し行き詰まったとき、自分に力をつけるためには、まったく知らない世界に飛び込んだほうが面白いのではないかと思い、スポーツという垣根を取り払ってみました。すると、今までに考えもつかなかったようなアイデアがたくさん浮かんできたんです。

ある日、自宅の押し入れで、クリーニングをしてきれいに保管してあるウェディングドレスを見つけました。結婚当時に購入し、2時間ほど着ただけのものでした。「新品同様なのにもったいない。これと同じようなドレスを集めればお店ができるのでは」と思い、インターネットで調べてみると、中古ドレスを販売しているお店はあるけれど、どこも「中古=なんでもあり」という売り方でした。それならば、「厳選した中古ドレスのお店」にすれば興味も持ってもらえるのではないかと思い、まずは簡単なホームページを作成することにしました――「あなたのドレス、売りませんか?」。そんなふうに知識も人脈もないまま始めたのですが、全国のドレスを売りたいという方から予想以上に連絡をいただくようになり、まもなく自宅がドレスで埋まっていきました。そのころ、試着や購入希望の方からも少しずつお問い合わせをいただくようになり、友人が開いている整体院のスペースを借りてドレスフェアを開催したりしていました。でもやはり、いつでも好きなだけドレスを試着してもらえる場所が必要と考え、2009年の4月に実店舗のドレスサロン「ミループ」 をオープンしました。

― 貴店ではワンオーナーのドレスだけを扱っているそうですね。

浦木健太さん実は、最初からワンオーナーにこだわっていたわけではなく、レンタルドレスとして活用したあとに海外へ寄付することも視野に入れていたんです。ところが、ドレスを厳選していくうちに、やはりワンオーナードレスに特化したほうがサロンとしての質も高くなるだろうと判断しました。現在は、ワンオーナーであることに加えて、生地やスタイルにこだわった人気ブランドのドレスに限定しているので、最新の人気ドレスが豊富に揃っています。中古ドレスといっても、お店に並ぶのは厳しい品質チェックを通り、クリーニング・メンテナンスを施したものだけです。そういうデザイン的にも品質的にも新品と遜色のないドレスが、新品の1/3程度の価格でご提供できています。

― 現在は、ウェディングドレス以外のサービスも提供しているとか。

サロンを開店したばかりのころ、ある結婚式場にクリーニングの業者さんが出入りしているのを見かけて、当店の新たなサービスのお手伝いをしてくれないかと相談してみたところ、すんなりと引き受けてくれたので、ドレスを大切に保管しておきたい方に向けてウェディングドレス専門の「ミループクリーニング」を始めました。また、サロンではウェディングドレスだけでなく、カラードレスやアクセサリー、ご新郎向けのタキシードやご両親向けの衣裳もレンタルで取り扱うようになりました。現在はベールやグローブ、ご新郎の小物などを専門に扱う「ミループオンラインストア」も運営しています。

また、ウェディングドレス1着のご購入につき、1本の苗木をお客様の名前で植樹し、メッセージと植林証明書をお贈りさせていただく森林再生プロジェクト「1 dress for 1 tree」も行っています。これは、僕が事業を立ち上げたときのキーワードのひとつに「環境活動」というのがあり、新郎新婦のおふたりにも結婚をきっかけに環境活動のことを少しでも考えてもらえれば、という思いから始めたものです。

― 日頃、人脈づくりや情報収集はどのようにされていますか?

浦木健太さんまず自分自身がいろんな経験を積んで人間力をつけ、人に会いたいと思われるような人間になることを目標としているので、これといって人脈づくりはしていません。ただし、アスリートの経験を経て起業しているので、スポーツ選手のセカンドキャリアにはとても興味があり、新しいことを始めている仲間を大事にしています。スキーは一般の人にも需要の高いスポーツなので、スキー選手は引退後、スキーコーチやスキーメーカーへの就職などスキー関連の仕事に就くことが多いんです。僕のようにまったく畑違いのビジネスを始めた人は少ないと思うので、さらに新しいことにチャレンジして、将来的にはスキー業界への恩返しがしたいです。また、このようなセカンドキャリアが後輩やさまざまなアスリートたちにとって少しでも刺激になればうれしいですね。

情報収集に関しては、経営に関するビジネス書はたくさん読んでいます。とはいえ、本に書いてある「経営者がやってはいけないこと」を僕はことごとくやっているんです。たとえば、経営者ならば通常は人に任せなければいけない、会計業務や時間のかかるウェブサイトの作成など自分でやってしまっています。もっとも、僕なりに自分でやりたい理由があるからなんですが。今後はドレスだけにとどまらず、最終的には式場も提供できればと考えています。まだアイデアレベルですが、地元新潟のスキー場などで行う高原ウェディングや海外ウェディングなどの事業も企画しています。ほかには海外の面白い商品を輸入販売するなど、フットワークの軽さを生かして、ブライダルに限らずどんどん新しいことに挑戦していきたいと思っています。

― 次回登場予定の関直哉さんとの出会いや、その後のお付き合いについて教えてください。

今年、株式会社エーというウェブ制作やブランディングを中心とした会社を立ち上げたクリエイターの関くんは、アメリカの高校の後輩です。5歳下なので高校時代は交流がなかったのですが、今では仕事上のよき相談相手でもあります。彼は“プロフリーター”と自称し、リュックにパソコンを入れていろいろな会社に顔を出しては、クリエイターとしての能力を発揮し、特にウィンタースポーツの企画やイベントの場では、欠かせない存在となっているようです。フットワークの軽い彼のワークスタイルは、これからの「新しい働き方」を予感させる存在です。